
このたび、2025年9月より木下浩作先生の後任として代表幹事を拝命いたしま
した、東邦大学医学部麻酔科学講座の武田吉正です。
本学会は、1998年に「日本脳低温療法研究会」として発足し、初代会長には日
本大学医学部救急医学講座の林成之先生が就任されました。創設以来、心停止蘇
生後や重症頭部外傷後の患者の社会復帰を目指し、軽度低体温療法を安全かつ
有効に実施することを主たる目的として活動を続けてまいりました。
これまでの歩みの中で、中枢温モニタリング法や冷却装置の開発が進み、当初は
ウォーターブランケットや胃冷却、氷による頭頚部冷却などが行われていまし
たが、その後、体表にジェルパッドを密着させて冷却水を灌流する装置や、中心
静脈カテーテル内に冷却水を循環させる装置が開発され、より正確かつ安全な
体温管理が可能となりました。現在では、自己心拍再開前に体外循環を実施し、
血流再開と同時に軽度低体温療法を導入する治療法も確立されています。さら
に、病院到着前から脳を選択的に冷却する装置の開発も進められ、本学会は体温
管理研究のトップランナーとして社会に貢献してまいりました。
近年では、熱中症の増加に伴い、脳保護を中心とした体温管理の重要性が再認識
され、この領域でも活発な議論が交わされています。急性期病態における体温コ
ントロールは生命維持に直結する課題であり、その発展には多分野にわたる知
見の融合が不可欠です。本学会には、脳神経外科医、救急医、循環器内科医、麻
酔科医、救命士、看護師など、多職種の専門家が一堂に会し、自由で実践的な意
見交換が行われております。また、新たな治療法を研究するには企業の参画を伴
う機器開発が欠かせません。本学会を中心として医療機器が共同開発されてき
ました。
今後もそれぞれの専門的立場から貴重な知見を持ち寄り、新たな治療法を創出
する学会として発展してまいりたいと存じます。引き続き、皆様のご指導とご支
援を賜りますようお願い申し上げます。